先日、成田国際空港内にあるレゴ®ストアに行ってきました。成田空港第1ターミナルに2019年12月13日にオープンした店舗です。
お目当てはレゴ®(LEGO®)ブロックで作られた「風神雷神図屏風」です。
このレゴ®ブロックで作られた風神雷神図を実際に拝見したところ、おどろきのアートとしての表現力をもつ素晴らしい作品でした!
最後まで読み進めていただくとこの風神雷神図作品の見方が変わるかも?ぜひご覧ください。
レゴ ブロックで作られた「風神雷神図屏風」
レゴ ブロックで作られた「風神雷神図屏風」は、国宝でもある俵屋宗達の屏風絵「風神雷神図屛風」をもとに作られた作品です。
このレゴ ブロック作品では、屏風絵の全体がレゴ ブロックを使ってモザイク画のように表現されています。
作品の製作者は三井淳平さん。2020年1月現在、世界で14人しかいないレゴグループ公認の「レゴ®認定プロビルダー(LEGO® Certified Professional)」で、イベントや施設の展示など多くのレゴ作品の製作を手掛けていらっしゃいます。
大きさはおよそですが、高さ190センチ、横幅は380センチくらいで、成田空港にあるレゴストアの入り口の横にある壁一面に収まるような形で展示されていました。
日本の玄関口でもある成田空港ということもあり、日本ならではの象徴的な展示になっています。作品の前で写真を撮っていく外国人旅行客の方も多く、当日はレゴストアの店内も旅行客でにぎわっていました。
レゴ ブロック作品「風神雷神図屏風」の写真
ここからレゴ ブロック作品「風神雷神図屏風」の写真を見ながら、作品の詳細について解説したいと思います。
なお、こちらのレゴ ブロック作品はフォトスポットとして利用可能とのことで、現地で自由に撮影可能となっています。
事前の告知もありましたが、今回は念のためレゴストア成田空港店のスタッフさんにもお伺いして許可を頂き写真を撮らせていただきました。
では、レゴ ブロック作品「風神雷神図屏風」の正面からの全体像です。
ちょっと近づいてみてみます。まずは風神。風邪薬のカ〇ゲンでもお馴染みですね。
風神は緑色の体で髪をなびかせています。また、風神は大きな袋を持っていて、この袋から大きな風を起こすとされています。
そして雷神。いわゆる「かみなりさま」ですね。
風神と雷神がまとっている羽衣のような布は天衣(てんね)というそうです。天衣の柔らかな曲線や細かい色あいなどがレゴ ブロックで再現されていることがわかります。
さらに作品に近づいて見てみるとこんな感じ。
使われているブロックは黄色、緑、茶色、濃いグレー、薄いグレーなど、見慣れた色が中心のようです。
この使われているレゴ ブロックの色にもポイントがあります。
レゴ ブロックは色のバリエーションが多くあります。モザイク画として絵画などを再現するとき、使える色の数が多ければ多いほど表現力や再現性が増し、さらには制作作業での労力もおそらく低く抑えられるのではないかと思いますが、この作品はそうではなく、限られた色のブロックだけが使われています。
この三井さんのレゴ ブロック作品ではただただ多くの色を使うのではなく、レゴ ブロック製品でよく使われている基本的な最低限の色に絞ったうえで、限られたブロックの組み合わせによって鮮やかな色合いを表現することにもチャレンジしているように思われます。
こちらは背景の金色の部分をアップで撮ってみたところ。2ポッチ×1ポッチの金色のタイル(表にポッチがついていない平面のパーツ)が背景にたくさん使われていました。
この金色のタイルピースに関しては後半でも触れますが、特定のキットにしか使われていないレアなパーツとなっています。
また、この2ポッチ×1ポッチの金色のピースですが、よく見ていただくと16ポッチおきに縦横を入れ替えて正方形状に配置されていることがわかります。
なぜこういう表現がされているのかとちょっと気になったのですが、実際の風神雷神図屛風と比較してみるとわかりました。
レゴ「風神雷神図屏風」の表現テクニック
三井さんのレゴ ブロック作品のもととなった風神雷神図屏風では、背景全体が「金箔」を使って装飾されています。
この金箔は一枚一枚が正方形に切りそろえられているため、箔を押した際(金箔を並べて張り付けた際)に金箔同士の継ぎ目(箔足というようです)や金箔一枚一枚の風合いが表れます。
この縦横を入れ替えた金色のタイルの配置は、この金箔一枚一枚の風合いを表現するためのアイデアとして使われているようでした。
レゴ作品の風神雷神図屏風を遠目で見てみると、この16×16ポッチの金色のタイルの配置にあわせて正方形が並んだ金箔のような風合いが自然に浮かび上がることがわかります。
また、屏風絵の風神雷神図屏風でのゆったりと描かれた曲線や髪の毛1本1本までかき分けられた繊細な線、金箔の上に書かれた雲のもやっとした効果、一部の塗料が剥げて薄くなった様子など、作品の核となる表現はレゴ作品でも省略されることはなく、本来の美術作品としての特徴的なタッチとしてしっかりとレゴ ブロックを使って再現されています。
さらに、屏風絵の風神雷神図をみてみると、髪の毛の部分などは他の主線とは太さや強弱が異なることがわかります。
このレゴ作品では、髪の毛や顔の部分は1ポッチ幅のモザイク風の表現ではなく、薄いプレート(一般的なブロックの3分の1の高さのブロック)を縦に配置して使うことで1ポッチ幅よりも細い線を作り、この線画部分のタッチの違いを表現しています。
下記は風神の顔周辺のアップです。厚みの異なるレゴ ブロックが複雑に組み合わされて線と面を表現しています。
このあたりは実際の風神雷神図屏風の画像を検索してみるなどで、ぜひ作品同士を見比べてみていただきたいです。
単純にレゴ ブロックを平面に並べて作るのではなく、元の作品の特徴やタッチを詳細に把握されたうえで立体的に設計されていることがよくわかると思います。
レゴ ブロック作品「風神雷神図屏風」が持つアート性
レゴ ブロックでモザイクアートを作るという場合、素人目には元の図柄をブロックの面積に合わせてデジタルでモザイク処理をして、1ピクセルごとにブロックを乗せて作っていくのでは?なんて思ってしまっていたのですが、こちらの作品を直接拝見して、そうではないということがわかり、本当に目から鱗でした。
機械的な変換だけでは失われてしまうアートとしての本質。これを限られた表現方法の中で残し、思いもよらないテクニックを使って最大限に魅せる。
それがデジタル加工だけでは作れないレゴ認定プロビルダーとしての三井さんのお力なのだと思いました。
改めてレゴ作品の全体像を見てみると、レゴ ブロック1ピース1ピースの取り付け方のコンマ何ミリの微妙なずれ、浮きなども作用して、光が当たることでピースひとつひとつがすべて異なる鮮やかな色合いに変化しています。
デジタルではシミュレーションできない芸術性の要素のひとつといえるのではないでしょうか。
これらのテクニックや仕掛けによって「日本画」としての作風、「金屏風」としての質感がこのレゴ作品では大変美しく表現されています。
ページの初めのほうにレゴ作品の全体写真を掲載しましたが、ここまで内容を読んで気になった方はぜひ改めて写真をご覧になってみてください。
この写真のように離れた場所から見ることで、金箔の風合いや色の濃淡の変化がよくわかります。
光り輝く金の背景や風神雷神の線の強弱、雲の濃淡の変化などが先ほどとは違って見えてきませんか?
レゴ ブロック作品「風神雷神図屏風」は、計算によって作られたデザインと、人の手で組み上げることで生まれてくる繊細なタッチによって、日本の伝統技術や美術的な作風が見事にレゴ ブロックで表現されたアート作品だと思いました。
レゴ ブロック作品「風神雷神図屏風」の余談
このレゴ作品「風神雷神図屏風」の横には、制作者の三井淳平さんのコメントが掲載されていました。
それによると、この作品の背景に使われている金色のタイルは「レゴ クリエイターエキスパート 10266 NASA アポロ11号 月着陸船」に使われているものなのだそうです(2020年1月現在)。
レゴ ブロック作品の「風神雷神図屏風」は2020年1月現在、成田国際空港の第1ターミナル中央ビル新館4Fにあるレゴストア成田空港店に展示中です。
写真で鑑賞しても素晴らしい出来栄えなのですが、成田空港に足を運ぶ機会があればぜひ実物をご覧になってみてください。
以上、三井淳平さんのレゴ作品、「風神雷神図屏風」のレポートでした!